F-2戦闘機をつくる《番外編4》接着剤について
用途で使い分けたい接着剤の話
皆さんこんにちは!がっちです。
「F-2戦闘機をつくる」を書店購入されている方は、もう第2号を組まれたのでしょうか? 直送定期購読を申し込んで、恋い焦がれる乙女のように第2号の到着を待ち続けていた私の元にも、ようやく昨日(2/6)第3号と一緒に第2号も届いてウキウキ気分でこの記事を書いています。
前回は予定を変更してドライバーとビスのお話をさせて頂いたので、今回こそは接着剤のお話をさせて頂こうと思います。
接着剤の種類
「接着剤」と一口に言っても、木工用、金属用、ゴム用、プラスチック用、ABS用、万能型、瞬間接着剤、エポキシ接着剤などなど枚挙に暇がありませんが、ここでは「F-2戦闘機をつくる」で使えそうなものと、お役立ち情報をご紹介したいと思います。
ABS接着剤
『「週刊 航空自衛隊 F-2戦闘機をつくる」《創刊号》組立編』でも少し触れましたが、ABS樹脂で出来ているパーツ同士をくっつけるのに使う接着剤です。
プラモデルを作られる方はご存じの方も多いかと思いますが、PS(ポリスチレン)樹脂(所謂一般的なプラスチック)同士をくっつけるプラモデル用接着剤と同じ原理です。
ABS樹脂を溶かす溶剤(アセトン)が含まれていることによって、接着剤が塗られた部分のABS樹脂を溶かして溶着するものですので、ABSパーツと金属パーツといった異素材同士の接着は出来ないことに注意が必要です。
また、アセトン溶剤は揮発しやすく、一度開封すると時間経過によって溶剤が揮発した分、接着剤の粘度が増して糸をひくようになり、使いにくくなることがあります。
そうなった時はアセトン溶剤を後から足してやることで元の粘度に戻したり、より薄めてサラサラにして使いやすくすると言ったことが可能です。
もともとセメダイン製のものを購入して使用いましたが、ご覧の通り縦長の瓶のためハケが長くて使いにくかったので、タミヤ製のものを買い直しました。(瓶&ラベルのデザインもこちらの方がカッコいいですねw)
アセトン溶剤は、DIY用とネイルリムーバー用のものが売られていたりしますが、上記でオススメしているのは少容量かつ安価な後者のものになります。
それ以外で使えそうな接着剤と、その関連商品を取り揃えてみました。
セメダイン ハイグレード模型用接着剤
これがまた優秀な接着剤のようです。
パッケージでも謳っているようにクリアパーツを曇らせることがなく、はみ出しても乾燥する前なら水で濡らした綿棒などで拭き取り可能。唯一の欠点は硬化まで時間を要することですが、裏を返せば瞬間接着剤のように一発勝負ではなく、じっくり位置調整を出来ると言うメリットにもなりますね。
接着したいパーツ同士の片方に塗布して3分程度待ってから貼り付けると、より接着力が増す…と言う体験談もあります。
上記の特性から、「F-2戦闘機をつくる」ではキャノピーや各種点灯箇所の固定に使えるんじゃないかと考えています。
より詳しくハイグレード模型用接着剤のことを知りたければ、公式の解説ページをご参照下さい。
エポキシ接着剤
A液とB液を混ぜて使う、独特の使い方の接着剤です。
こちらも白化現象が起きたり、やクリアパーツを曇らせたりすることがないのはハイグレード模型用接着剤と同じなのですが、2液を混ぜた瞬間から硬化が始まり5分程度で完全硬化してしまうので、無駄にしないよう量を調整するのが難しいかも知れません。
こちらは硬化する前であればエナメル溶剤で拭き取りが可能なので、瞬間接着剤よりは失敗が少ない上に、強度も相当にあるので力が加わる上に白化が起きたら困る外装系(「F-2戦闘機を作る」ではアンテナなど)の接着箇所に向いているかと思います。
瞬間接着剤
今回の記事の目玉でもあり、「F-2戦闘機を作る」でも出番の多い接着剤になるかと思います。素材を選ばず何でも即座にくっつける、文字通り「瞬間接着」を目的とした接着剤です。
欠点はやはり「瞬間」での接着なので位置調整がしずらく、失敗したら取り返しがつかなくなることが多い。加えて、使う箇所や商品に気を使わないと白化するのでクリアパーツには向かないと言ったところでしょうか。
瞬間接着剤を試す!
そんなクセの強い接着剤ですので、今回は白化しやすい・しにくいのはどの接着剤か、接着強度はどれが強いのかを実験をしてみることにしました。
エントリー商品
テストの対象となるのは、以下の4品です。
- エントリー No.1
リンク「F-2戦闘機をつくる《創刊号》」付属の瞬間接着剤でもあるアルテコ社の「パワーエース 強力瞬間接着剤 液状タイプ」です。
一般販売もされているんですね。 - エントリー No.2
リンクウェーブ社の「黒い瞬間接着剤」です。
以前、別の目的で以前購入したものも今回試してみることにしました。 - エントリー No.3
リンク東亞合成社の「アロンアルファ プロ用耐衝撃」です。
プラモデル界隈で評価の高い商品からのエントリーです。 - エントリー No.4
リンクヘンケル社の「ロックタイト 高機能瞬間接着剤 460」です。
こちらもプラモデル界隈で高評価を得ていることからエントリーです。
いざ、実験!
そこに瞬間接着剤の硬化促進剤を掛けて、硬化を早めます。
左から
- 「パワーエース 強力瞬間接着剤 液状タイプ」
- 「黒い瞬間接着剤」
- 「アロンアルファ プロ用耐衝撃」
- 「ロックタイト 高機能瞬間接着剤 460」
の順でランナー端を貼り付けてみました。
実験結果1 白化状態
白化したときに分かりやすいようにと土台に黒いプラバンを使ってみたのですが、その判断は間違いであるような気がします。白化もそうですが、曇りが発生したかどうかがわかりにくくなっていますね。
瞬間接着剤の量やランナーの切り口に基準を設けての試験ではないので、厳密な結果とは言い難いですが、おかげで写真ではあまり大きな差がないように見えてしまっています。
肉眼で直接よくみてみると、「1」と「2」の液溜まり外縁に薄っすらと白化が見られました。「3」と「4」には殆ど白化は見られていませんでした。
実験結果2 接着強度
接着強度の実験は、「接着したランナー端に指を当てて、力を超えめてへし折る」と言う酷く原始的な方法で行ってみたのですが、結果は実に分かりやすいものでした。
「1」「2」「4」はそこそこの力で接着箇所から折れましたが、「3」は異次元の硬さで指の痛みに耐えられずにへし折ることを断念するほどでした。
かといって、「1」「2」「4」の接着強度が不足というわけではなく模型用としては十分な強度であると感じました。「3」の強度が異常なレベルなだけです。
考察
異次元の接着強度と白化しにくい特性で、圧倒的な実力を見せつけた「アロンアルファ プロ用耐衝撃」。もはやこれ1本持っておけば他の瞬間接着剤は不要なのではないか、と思われます。
ただ、どんなに白化しにくいとは言っても絶対ではないので、やはりキャノピーや、塗装を前提としない濃い色のパーツへの使用は避けたほうが無難かと思います。
今後の組み立て記事中でも、適した接着剤は何かをコメントしながら作って行きたいと思いますので、皆さんも自分のスタンスに近い接着剤を使ってみて下さいね。
硬化促進剤について
前述の実験について、さらっと「硬化促進剤を掛けて、硬化を早めます」と書きましたが、今回使用した硬化促進剤がちょっと特殊なものになっています。
通常の硬化促進剤には前述のABS接着剤でも説明した樹脂を溶かす「アセトン」が含まれています。これによりクリアパーツや艶ありパーツに硬化促進剤を直接掛けると曇ってしまうと言うリスクがあります。
こちらの硬化促進剤はちょっと変わっていて、そのリスクを生むアセトンが含まれていないので、樹脂パーツにも使えると言う利点があるそうです。
実際、実験結果の黒いプラバンは曇っていないことはご確認頂けるかと思います。
普通の硬化促進剤であっても直接接着部位にスプレーするのではなく、ビニール袋などにスプレーの気体を吹き込んで、そこに接着した部品を入れて中の気体に触れさせることで硬化させれば曇らない…と言う説もあります。
(曇る硬化剤が手元になく、未実証なので自己責任でお願い致します)
グルーアプリケーターについて
接着剤を任意の部位に塗布するにあたって、このような便利な商品もあります。
(店頭在庫がなくなりつつあるようです。再販の有無がわかりませんのでお求めの際はお早めに)
単に接着剤を塗りつけるだけの棒なので、ぶっちゃけ「つまようじ」でもいけるんじゃないか?と思わなくもないですが、先端が平坦になっているスティックや、接着剤用のパレットもあって、専用品として洗練された商品だとも思えます。
瞬間接着剤ノズルについて
商品によっては瞬間接着剤に極細ノズルが付いていることがありますよね。
「そこまで細かいところに使う機会はあまりないんじゃ?」と思ってしまいませんか?私は思っていました。
極細ノズルを付けずに瞬間接着剤を使った場合、次に使うまで時間が経ってしまうと容器の先端に硬化した瞬間接着剤が詰まって、まだ液状の中身がたっぷりあるのに使えなくなってしまう…そんなことを防止する役割があるんだそうです。
極細ノズルを付けておけば、その先端が硬化して詰まってしまった場合でも、その部分だけを切り落せばまたすぐに使えると言う用途なのだそうで、段々短くなっていって使えなくなった極細ノズルは、新しいものに付け替え行けば良いようです。
そんなわけで、ノズルが付いていない商品や、付け替えのために予備を手元に置いておくと良いかも知れません。
次回予告
さて、少しは接着剤について迷わなくて済む参考になりましたでしょうか?
次回はいよいよ到着した「F-2戦闘機をつくる」《第2号》の組み立てを行って行きます。久しぶりの本誌に取り掛かれるので私も凄く楽しみです!