Gacchi’s WORKSHOP

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F-2戦闘機をつくる《番外編6》ねじ切りについて

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ネジ締め部分のパーツ精度…どうなの?

みなさんこんにちは!がっちです。

F-2戦闘機をつくる」が創刊されてから、毎号届くのが楽しみ過ぎて色んな方が発信されているSNS、動画配信など関連情報を拝見させて頂いているのですが、結構な確率で「ビスがきちんと根元まで入らず、取り付けた部品がカタカタと音を立てて揺れてしまう」と言うお話を目(耳)にすることがあります。

そこで今回は、このネジ締め問題の解決方法についてお話しさせて頂きたいと思います。

困った!ビスが入らない!

ビスが根元まで入らないのは、ネジ山(ネジ穴や、ネジそのものに彫られた螺旋状の溝のこと)がしっかり切られていない(溝が埋まってしまっている)からなんですね。

これにより、金属パーツ同士がしっかり止まらず、出来た隙間によってカタカタを音を立てて揺れてしまうことが起きているようです。

第4号まで発売されている2/21現在、特にこの現象は第2号付属のパーツ「2-1 コクピットパーツ1」と「2-5 コクピットパーツ2」とをネジで留める際、ビスの受け側(ネジ穴)である「2-5」での発現が顕著なようです。

私のパーツでも例に漏れず所謂「ハズレ」を引いてしまったようで、ビスを締める際の負荷が異常に高かったので今回の記事を書くに至ったわけですが、問題のパーツを良く確認してみると…

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エラー(不良品)率の高い、憎いコイツ。

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ネジ穴の中にまで塗料が入り込んでネジ山が埋もれてしまっています。

ネジ穴の中にまで塗料が入り込んで、見事にそこにあるはずのネジ山が埋もれてしまっていることが確認出来ます。

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いつもの力ではビスが全く入っていきません。

力を込めて無理やりビスを締めたら、もしかしたら入って行くのかも知れないのですが、ビス自体も大変細くて脆いものなので、あまり無理をして取り返しがつかない状態になることも避けたかったので、今回は正攻法での対処を考えました。

そんな時、どうすればいい?

ビスが入らない時の対処は大きく分けて2つあると思っていて…

不良品として交換して貰う

これが一番まっとうな対応かと思います。

『「週刊 航空自衛隊 F-2戦闘機をつくる」《番外編5》定期購読のススメ』でも触れさせて頂いていますが、店頭購入をご利用になっている方はお買い求めの店舗さんに、直送定期購読をご利用になっている方はデアゴスティーニさんに不良品である旨を伝えて交換して頂くのが正しい対応かと思います。

ただしデメリットもあって、前者の場合は再度同じ不良品に当たってしまう可能性があること、後者の場合はデアゴスティーニさん側で厳しい再検品をした良品を再送して頂くことになるので少々お時間を要してしまうことが挙げられます。

自分で直しちゃう

実はこのネジ山が切られていない(螺旋の溝が埋まってしまっている)問題は自分で直すことが出来ます。

専用の工具を使用してネジ山を掘り起こしてやるのですが、この作業のことを専門用語で「ねじ切り」と言ったりします。

こちらのデメリットは、道具の購入費用が掛かってしまうことでしょうか。
以降は、この「ねじ切り」をするにあたっての解説をさせて頂こうと思います。

今回使用するツール

「ねじ切り」をするにあたって、必要になる道具は以下の通りです。

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ネジ切りに必要な4つの道具
  • ねじ切り用タップ

    ネジ山を掘るためのドリル刃のようなものです。
    F-2戦闘機をつくる」で使用するネジはM2サイズなので、同じM2サイズ用のタップをご用意下さい。
    タップには荒用、中仕上用、仕上用の3種類が存在しますが、上記でご紹介したお得な3本セットを用意しておくと便利かと思います。

  • タップホルダー

    タップを取り付けて回すためのハンドルです。
    ハンドルは取り付けられるタップのサイズが決まっているので、M2サイズのタップに対応したハンドルを選びましょう。

  • 切削潤滑油

    ネジ切りをする際にタップの刃もしくはネジ穴に塗布して使用する切削用の潤滑油です。タップ刃も大変細いので折れるのを防ぎ、彫りやすくするために必要になります。
    ただし、これは金属に対してのみ使用し、プラスチックなど樹脂系素材には侵食する恐れがあるので使用しません。

  • パーツクリーナー

    ネジ切りをしたあとでネジ穴に潤滑油や削りカスが残っているとビス締めに問題が出てしまうので、それらを除去するためのクリーナーです。

ねじ切りの下準備

用意した道具の準備をします。
まずはタップのケースを開けてみると、3本のタップが入っているかと思います。パッと見は全部同じように見え、根元の刻印にも分かりやすい差異は見らません。(不親切ですよね)

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3種のタップのうち「中仕上用」から使用します。

しかし、刃先をよく見比べてみると…こんな感じでネジ山がどこから始まっているかで見分けることが出来ます。

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タップのちがい(商品説明画像より借用)

「荒用」はネジ山が全く存在しないただの穴にねじ山を彫り始めるだめのもので、今回は「恐らく塗料で埋まっているだけ」の状態だと思われるので、「中仕上げ用」と「仕上げ用」を使用することにしました。
(「仕上げ用」1本だけでも大丈夫かと思うのですが、念には念を入れて慎重に進めることにしました)

このタップをハンドルに取り付けると、こんな感じになります。

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ハンドルにタップを取り付けました

その後、タップの刃の部分に切削用潤滑油を塗布してやります。

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適度に濡れてる程度に塗布します。

安定のピンボケですが、これで準備が整いました。

いざ、切削!

道具の準備が整ったところで、早速切削大冒険…(元ネタの分かる同年代の方のみお笑い下さい)もとい、早速切削を行って行きます。

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タップの角度を穴の角度に合わせて、ブレないように回して行きます。

タップの角度をネジ穴の角度に合わせる形で刃先をネジ穴の入り口にあて、ゆっくり時計回しに3/4回転させては1/4回転戻し…と言う動作を繰り返してネジ山を掘って行きます。

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3/4回転締めて、1/4回転戻すを繰り返します。

より詳細な説明は下の画像を参考にして下さい。

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ねじ切りの詳細。(商品説明画像から借用)

タップの回転に抵抗を感じたら、それ以上は掘れない位置に到達しているので、タップを逆回転させて抜き去ります。

作業後の後始末

ねじ切りをしたばかりのネジ穴の中は、切削用潤滑油と削りカスが溜まっています。
これをパーツクリーナーで除去するわけですが、クリーナーが塗装面に付くことを避けたいので、ティッシュやウエス(機械類のよごれをふき取るためのぼろ布)などで周りに付着しないように覆いながら、極細ノズルをネジ穴に向けて噴射します。

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ティッシュなどで周りを多いながらシュっと一吹き。

パーツクリーナーの噴射の勢いでティッシュ(ウエス)に飛び散って付着した銀色の削りカスを見ることが出来るかも知れません。きちんとねじ切りが出来た証ですね。
他にパーツクリーナーや潤滑油、削りカスが飛び散っていれば綺麗に拭き取って作業完了です。

復旧完了!

実際ねじ切りをしたネジ穴の様子を確認してみましょう。

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ネジ穴の中に綺麗に溝が彫られているのが確認出来ます。

未処理の下側のネジ山と比べて見て頂ければ一目瞭然ですが、きっちりと綺麗に溝が彫られていることが確認出来るかと思います。

では、実際にビスを締めてみましょう。

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キツくて入らなかったネジが、すんなり根元まで入りました。

そうですね、ピンボケです。

ですが、ネジが根元まで入っていることがご確認頂けるかと思います。
これにて一件落着ってなわけで、今後同じ症状に見舞われてもサクっと自分で修正することが可能になりました。

今回使用した道具を一通り揃えると3,000円近く掛かってしまう計算ですが、もし今後もパートワークマガジンを続けて行くつもりがあったり、既に複数購読されていると言った方の中で、「この程度のことは自分でどうにかしたい」とお考えであれば、この機会に揃えておくと後々困らずに済むのではないかと思います。

是非、ご検討下さいね。

次回予告

次回は商品の到着が遅れなければ、「F-2戦闘機をつくる」《第4号》の組み立てを行う予定です。機体右側キャノピー下の制作に入るようなので、更に存在感ば増しそうで楽しみですね!